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第10回地盤改良工事雑学講座

皆さんこんにちは!

株式会社Cleyera Fukuoka、更新担当の中西です。

 

さて今回は

~設計~

ということで、地盤改良工事の設計において何を考慮すべきか、どのように最適な設計を導くのかを、構造・地質・法規制・保証の視点から深く掘り下げて解説していきます!

 

安定と信頼性をつくる“地中からのエンジニアリング”

地盤改良工事の目的はただ一つ
「建物を安全・安定的に支えること」

しかし、建物を支える地盤は目に見えず、条件も場所によって大きく異なります。だからこそ、設計段階の判断と技術的根拠が、施工品質と長期的な安全性を左右するのです。


✅ 地盤改良設計の目的と基本方針

地盤改良工事の設計とは、「不適切な地盤を補強・安定化するための構造的かつ合理的な設計」を行うことです。

主な目的

  1. 不同沈下を防ぐ

  2. 必要な支持力を確保する

  3. 安全性・施工性・経済性のバランスをとる


✅ 地盤改良設計の基本プロセス(全体の流れ)

以下のステップで設計が進みます

① 地盤調査結果の読み取り

  • N値、地層構成、土質(粘性土・砂質土・腐植土など)

  • 地下水位とその変動リスク

  • 支持層(≧N20〜50)の位置と厚み

  • 土壌汚染・埋設物の有無

② 建物条件の確認

  • 建物の構造(木造・S造・RC造など)

  • 総重量、基礎形式、荷重分布

  • 荷重条件(偏心・集中荷重など)

③ 工法選定

地盤と構造条件から、以下の工法を検討します

工法 適用条件
表層改良工法 支持層が浅く、建物荷重が小さい場合(住宅など)
柱状改良工法 支持層が3〜8mにあり、軽〜中規模建物に適用
鋼管杭工法 支持層が深い、または厳密な沈下抑制が必要な場合

④ 改良体の設計(寸法・配置)

  • 杭径、杭長、改良体の中心間隔

  • 杭先端の支持層到達確認(支持層厚≧杭径の1/2など)

  • 杭の本数と分布(基礎配置と一致させる)

  • 材料の種類と混合量(固化材・水の比率)


✅ 設計における重要確認ポイント

1. 支持力の検討(許容支持力度)

  • 設計支持力度(qd)の設定は、N値や土質ごとに規定(地盤工学会基準など)

  • 地耐力の検討には、安全率(1.5〜2.0)を加味

  • 不同沈下の防止には、周囲地盤との剛性差や沈下差を計算

2. 改良体の連続性と分布

  • 杭間距離は杭径の2〜3倍以内(ばらつきを抑える)

  • ベタ基礎との接合性(全面的な支持体か、点支持か)

  • 改良体同士が干渉しすぎると施工不良のリスクあり

3. 地下水の影響

  • 地下水位が改良深度にある場合、固化不良の可能性

  • 地盤の吸水性により、水セメント比の調整が必要

  • 湿潤時の土質強度低下に注意(特に腐植土)

4. 環境と施工性

  • 狭小地、隣接建物、法面などで施工制限がある場合

  • 騒音・振動対策として、低騒音機・鋼管圧入工法が選ばれることも

  • セメント系固化材の飛散・粉塵対策(特に市街地)


✅ 地盤保証との整合性(地盤保証制度に対応する設計)

現在、多くの住宅や中小建築物では、地盤保証制度が導入されています。
これにより、以下のような設計基準・条件が求められるケースがあります:

  • 保証会社が指定する改良深度・固化材量・支持層条件の遵守

  • 柱状改良体の地耐力が50kN/本以上などの基準

  • 材料メーカー指定の混合比や養生条件の設定

  • 事前審査や改良計画書の提出

👉Point: 保証制度に対応する場合は、設計段階で保証条件を必ず確認し、施工可能な範囲に収める必要があります。


✅ 木造2階建て住宅 × 軟弱地盤(柱状改良)

地盤調査結果

  • N値:0〜3(深度3.5mまで)

  • 地下水位:2.2m

  • 腐植土なし

設計概要

  • 改良工法:柱状改良工法

  • 杭径:600mm

  • 杭長:4.0m(支持層N≧20)

  • 杭芯間隔:1.2m〜1.8m

  • 改良本数:56本

  • 固化材:セメント系固化材、混合比率200kg/m³

チェックポイント

  • 改良体が支持層に到達しているか

  • 全体で建物荷重に対する安全率が確保されているか

  • 地盤保証基準(荷重・沈下量・施工記録)を満たしているか


✅ 設計時に活用すべき資料・ガイドライン

種類 内容
地盤工学会「地盤改良設計・施工指針」 柱状改良、表層改良、深層混合処理の設計基準
建築基準法・施行令 杭基礎・地盤に関する法的根拠
保証会社マニュアル(ジャパンホームシールドなど) 保証対応基準・改良深度・混合比等
地質調査報告書 断面図、試験結果、地下水情報など

✅ 見えない“地盤”にこそ、設計の真価が問われる

建物は「地盤の上」に成り立ちます。そしてその地盤が不安定であるならば、
どれほど頑丈な建物も、その性能を発揮できません。

だからこそ、地盤改良の「設計」は、単なる数値の計算ではなく、地質・構造・法規・施工を総合的に理解した“現場密着型の判断力”が求められる分野です。

プロフェッショナルとして、安全で無駄のない改良設計を提供することが、施主の信頼・品質保証・工事の成功につながります。

 

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